「お気に入りのヴィトンのクラッチバッグに飴が溶けてくっついてしまって…」
そんなご相談を受けてお預かりした今回の一品。表面のべたつきや変色を確認し、いつものように丁寧に洗浄作業を始めようとしたところ──
実は、内側に飴の汚れではなく“加水分解”による深刻な劣化が進行していたのです。
加水分解とは、長年の保管や湿気・温度変化などの影響で、合成皮革の素材が劣化してしまう現象のこと。
表面がベタつき、剥がれや浮き、ひび割れが起きてしまうため、通常のクリーニングでは対処できません。
「ただの汚れだと思っていたら、実は素材が劣化していた…」
そんなケースは意外と多いものです。


今回のクラッチバックは外面はとてもきれいで劣化が進んでいるようには見えません。
しかし、内側は劣化がすすんでいました。
before

after

before

after

当店では、バッグの素材状態をしっかり見極めた上で、洗浄だけでなく修復処置まで一貫対応。
本来の美しさを損なわず、再び安心してお使いいただける状態に整えることができました。
加水分離を防ぐためにできること
1. 高温多湿の場所を避けて保管する
押し入れやクローゼットの中でも、湿気がこもりやすい場所は加水分解の大きな原因になります。除湿剤や乾燥剤、すのこなどを活用し、風通しの良い環境をつくることが大切です。
2. 定期的に空気に触れさせる
長期間まったく開けずにしまい込むと、湿気がこもって劣化が進みます。数ヶ月に一度はバッグや靴を取り出し、風通しの良い日陰で数時間程度陰干しするのがおすすめです。
3. ビニール袋ではなく通気性のある布袋で保管する
ビニールは湿気がこもりやすく、加水分解の原因になります。保管時は不織布や綿の袋など、通気性のある素材を使いましょう。
4. 使わない期間も時々手入れす
長期間使わないからといって放置せず、柔らかい布で軽く拭いたり、内部のホコリを取るなどの簡単なお手入れをしておくことで、加水分解だけでなくカビや臭いも防ぎやすくなります
職人からの一言
一見、外側はとてもきれいで「まだまだ使えそう」と思えるバッグでも、内側では加水分解などの劣化が静かに進んでいることがあります。
外見が美しいからこそ、もう一度気持ちよく使えるように、内装の修復や張り替えも含めて対応いたします。
「もう捨てるしかないかも…」と悩む前に、ぜひ一度ご相談ください。
全国から宅配でのご依頼を承っております。
